小さい蒲公英(
大正(十年(二月(の頃(、皆(の知(つて居(る通(り私(は京都(監獄(に居(つた。或日(の散歩(に、枯草(の中(に咲(いて居(る一輪(の蒲公英(を見出(した。ああ其(一輪(の花(、それによつて私(はどの位(慰(められたか分(らなかつた。何(と云(ふ愛(らしい花(であらう。冬(の寒(い長(い間(百草(も枯(れて、何(も無(いやうに見(える此(花(が、春(の光(を浴(びると、眠(つた如(く見(えた根(からは青(い芽(が出(で、葉(が伸(び、やがてはあの豊醇(な乳(を持(つた美(しい黄色(や、白(い花(が咲(くのである。何(だか私(の境遇(に似(て居(るやうである。私(は思(ふた。たとへ此度(の事(によつて大本(が潰(れたとて、五十七才(になつたら又(元(の六畳敷(から初(めやう、教祖様(は五十七才(にして初(めて立(たれたのだから……。
かくこの一輪(の花(によつて慰(められつつ、日(を送(つて居(る中(、やがて春(の最中(になつて、そこら一面(蒲公英(の花(をもつて埋(めらるるやうになつて来(た。何等(の慰(めをも持(たぬ囚人達(は如何(に此(花(によつて慰(められた事(であらう、朝(に夕(に花(は囚人(の唯一(の愛(の対象物(であつた。然(るに心(なき園丁(は掃除(をするのだと云(つて、皆(此(花(を引(きむしつて仕舞(つた。
神の国 1926/06